賃金の決定原則

賃金の決定に当たっては、1.労使対等の原則2.均等待遇の原則3.男女同一賃金の原則の3原則に従わなければなりません。

賃金支払の5原則

賃金の支払方法のルールになります。

1.通貨払いの原則
賃金は、通貨(現金)で支払わなければならず、小切手、現物給与による支払いは原則として認められません。法令または労働協約に別段の定めがある場合には、現物給与が認められますが、この場合には労働協約でその評価額を定める必要があります。
また、労働者の同意を得た場合には、1.労働者が指定する銀行等の金融機関に対するへの振込,2.労働者が指定する証券会社に対する労働者の預かり金への払込み、の方法により賃金を支払うことができます。

口座振込については具体的には次のような指導がなされています。
(1)口座振込は次の事項を記載した書面による個々の労働者の申出または同意により開始すること
1.口座振込を希望する賃金の範囲・その金額
2.指定する金融機関店舗名、預貯金の種類・口座番号
3.開始希望時期
(2)次の事項を記載した労使協定を締結すること
1.口座振込の対象となる労働者の範囲
2.口座振込の対象となる賃金の範囲・その金額
3.取扱金融機関の範囲
4.口座振込の実施開始時期
(3)所定の賃金支払日に次の金額等を記載した計算書を労働者に交付すること
1.基本給、手当等、賃金の種類ごとにその金額
2.源泉徴収税額、社会保険料額等、賃金から控除した金額(種類ごとに)
3.振り込んだ金額
(4)振り込まれた賃金は、所定の賃金支払い日の午前10時頃までに全額払い出しが可能となっていること
(5)取扱金融機関は複数とする等、労働者の便宜に十分配慮して定めること

2.直接払いの原則
賃金は、直接労働者に支払わなければなりません。
したがって、未成年労働者の法定代理人に支払うことや、労働者の委任を受けた法定代理人に支払うことは禁止され、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効となります。ただし、労働者が病気等のやむを得ない理由に基づいて受理できない場合に妻子等の使者に支払うことは、さしつかえありません。
なお、賃金債権は、譲渡は可能ですが、他人に譲渡された場合においても、使用者は直接労働者に対して賃金を支払わなければならず、譲受人は自ら支払いを求めることはできません。しかし、使用者が、行政官庁等の差し押さえ処分に従い、労働者の賃金を控除のうえ支払うことは認められています。

3.全額払いの原則
賃金は、その全額を支払わなければなりません。
したがって、積立金、貯蓄金等を天引きしたり、貸付金、工場売店の売掛金と相殺すること等は認められません。
ただし例外として、1.法令に別段の定めがある場合,2.労使協定をした場合には、賃金の一部を控除して支払うことができます。
なお、労働者の自己都合による欠勤・遅刻・早退・労働組合のスト等の結果、契約の本旨に従った労働の提供のなかった限度において賃金を支払わないことや、前払額を控除することは、ここにいう控除にはなりません。

4.毎月払いの原則
賃金は、毎月1回以上支払わなければなりません。これは基本給に限らず、諸手当についても同様です。

この原則は、次に掲げる賃金については適用されません。
1.臨時に支払われる賃金(臨時的、突発的なものに限る)
2.賞与
3.1か月を超える期間の出勤成績によって支給される精皆勤手当
4.1か月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
5.1か月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給または能率手当


5.一定期日払いの原則
賃金は、一定の期日を定めて支払わなければなりません。
一定期日とは、支払う日が特定され、かつ、その期日が周期的に到来するものでなければならず、たとえば、毎月20日というように定めることをいいます。
なお、賃金は、その支払期日前に支払い必要はありませんが、非常の場合に労働者が請求した時は、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払うべきこととされています。これが、いわゆる「非常時払い」です。
非常の場合とは、1.出産,2.疾病,3.災害,4.結婚,5.死亡,6.やむをえない事由による1週間以上の帰郷,の事由がある場合をいいます。

賃金の保障

賃金保障のルールになります。

1.休業手当
使用者の責めに帰すべき事由により休業する場合には、使用者は、休業期間中(所定休日を除く)、その労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければなりません。
「使用者の責めに帰すべき事由」には、原則として、不可抗力以外の事由はすべて該当します。
不可抗力とは、1.その原因が事業の外部から発生した事故であること、2.事業主が通常の経営者として最大の注意をつくしてもなお避けることのできない事故であること、の二つの要件を備えたものでなければなりません。したがって、原料の欠乏、資金難、親工場の経営難による資材・資金の不足等による休業は、使用者の責めに帰すべき休業とされます。
また、一部の労働者によるストライキの場合に、残りの労働者を就業させることが無意味であるようなときには、就業させなくても休業手当の支払い義務はありませんが、残りの労働者を就業させうるにもかかわらず、その就業を拒否した場合には、使用者の責めに帰すべき事由による休業となります。
なお、使用者の故意または過失による休業の場合には、民法第536条2項の適用があり、労働者は、労務の履行の提供を要さず、賃金全額の支払いを請求できます。

2.出来高払いの保証給
出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、労働時間に応じて、一定額の賃金の保障をしなければなりません。 保障給の<額については、目安として、1日について平均賃金の100分の60程度の収入が確保されることが妥当であると考えられています。

3.最低賃金
使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対しては、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。

▼最低賃金制について詳しくはこちらへ

未払賃金の立替払制度

企業が「倒産」したために、賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、その未払賃金の一定範囲について労働者健康福祉機構が事業主に代って支払う制度です。

労働者健康福祉機構HP


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